【2025年法改正】職場の熱中症対策義務化(罰則付き)のリスクを解説

【2025年法改正】職場の熱中症対策義務化(罰則付き)のリスクを解説
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2025年6月から施行された熱中症対策義務化に伴い、企業は具体的な対象となる条件や法的リスクを正確に把握する必要があります。重大な労働災害を防ぐため、本社主導で法令順守を徹底する仕組みづくりが重要です。

しかし、現状の管理体制で法的な要件を満たしているかどうか、不安を抱える安全統括の担当者も少なくありません。そこで本記事では、熱中症対策義務化の対象となる条件や違反したときに想定されるリスクを解説します。

 

熱中症対策義務化の背景と対象条件

熱中症対策義務化の対象となる基準は、特定の環境条件と作業条件の両方を満たす業務です。

対象条件

基準

環境条件

暑さ指数(WBGT)が28℃以上、または気温が31℃以上の環境下

作業条件

連続1時間以上、あるいは1日あたり4時間を超えて実施する作業

国が法改正に踏み切った背景には、過去の重症化や死亡事案を分析した結果が存在します。厚生労働省のデータによると、熱中症が原因となる死亡災害において、もっとも多かった原因は「発見の遅れ」でした。

厚生労働省が分析した100件のデータのうち、78件が「発見の遅れ」による事案に該当します。重篤化するまで周囲の誰にも気づかれず、死亡に至る割合は他の労働災害と比較して約5〜6倍へ跳ね上がる実情です。

 


熱中症対策義務化で企業に求められる対応

厚生労働省が公開している「職場における熱中症対策の強化について」を基準に、企業として以下の対応を進める必要があります。

  1. 「熱中症の自覚症状がある作業者」や「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」がその旨を報告するための体制整備及び関係作業者への周知。
  2. 熱中症のおそれがある労働者を把握した場合に迅速かつ的確な判断が可能となるよう、①事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先及び所在地等②作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送等熱中症による重篤化を防止するために必要な措置の実施手順の作成及び関係作業者への周知

熱中症対策は、一部の管理職だけが内容を把握しているだけでは効果を発揮できません。現場に関わるすべての関係者が同じ基準で行動できる状態をつくるため、体制整備から周知まで安全意識を浸透させる取り組みが必要です。



知らなかったでは済まされない、「熱中症対策義務化」違反による4つのリスク

熱中症対策義務化の要件を満たさずに違反した場合、企業は主に4つのリスクを負います。

  • 労働安全衛生法に基づく刑事罰
  • 行政処分(業務停止命令など)
  • 安全配慮義務による損害賠償責任(民事)
  • 企業の社会的信用の低下

本社主導で各現場の状況を管理し、法令違反を回避する体制構築が必要です。各リスクの具体的な内容を把握し、事前対策を進めていきましょう。

 

刑事罰(労働安全衛生法違反)6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

熱中症対策を怠って労働安全衛生法に違反した場合、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科せられます。労働安全衛生法第119条1号に明確な罰則規定が設けられており、違反した場合は厳しく処罰される可能性を伴うためです。

また、事業主個人や現場の責任者のみならず、法人に対しても両罰規定により50万円以下の罰金が科されるケースも存在します(同法第122条)。罰則の対象となるのは元請企業だけでなく、現場に関わるすべての事業者です。

 

行政処分(業務停止命令など)

熱中症による重大な事故が発生した場合は、労働基準監督署による厳しい指導や是正勧告の対象となります。労働基準監督官が立ち入り調査を行い、安全管理体制の不備が発覚すると早急な改善計画の提出を求められるケースが一般的です。

万が一、指定された期限までに改善が見られない場合や違反の悪質性が極めて高いと判断された場合は、労働安全衛生法第98条に基づく行政処分が下されます。たとえば、対象となる現場の作業停止命令や建設物の使用停止命令などが出される事例も少なくありません。

 

安全配慮義務による損害賠償責任(民事)

安全に配慮した対応を怠り、従業員が熱中症で倒れた場合、企業や雇用主には損害賠償責任を問われるリスクが生じます。労働契約法第5条に基づき、使用者である企業・雇用主は、労働者の生命や身体の安全を確保して労働できるよう配慮する「安全配慮義務」を負うためです。

とくに重大な後遺症が残ったり最悪のケースとして死亡したりした場合は、従業員本人や遺族から高額の賠償金を請求されるケースも少なくありません。労災保険による基本給付だけでは慰謝料や逸失利益をカバーできない可能性もあり、企業側が不足分を全額支払うリスクを伴います。

 

企業の社会的信用の低下

重大な熱中症事故を引き起こした事実は、企業の社会的信用の著しい低下につながります。報道によって法令違反や安全管理の不備が明るみに出ることは、取引先からの信頼を失うだけでなく、既存契約の打ち切りや新規案件の受注機会を失う主な原因です。

とくに上場企業や大手企業の場合は、株価の下落や投資家からの厳しい追及を受けるリスクも伴います。また、企業名が公表されなくても、社員のモチベーション低下は免れません。基本的な熱中症対策もできないような企業で働いている事実に、社員が愚痴をこぼすことも十分に想定されます。

 


職場の熱中症対策に不安を感じる理由

法令順守を徹底している企業の管理層がとくに懸念しているのは「企業の社会的信用の低下」だと推察されます。罰則のリスクを避けるために「報告体制の整備と周知」や「緊急時措置の手順作成と周知」を形式的に行うことは可能です。 

しかし、安全部門の担当者がマニュアルを作成し、メールや社内掲示板で共有しただけでは、全社員がルールを正確に理解しているとは限りません。現場の従業員が具体的な行動手順を把握していない状況では、いざという場面で的確な初動対応が遅れてしまいます。

とはいえ、作成したルールが「現場に浸透していないのでは?」と不安を抱くのは、経営企画や安全統括の担当者として自然な反応です。まずは罰則の対象となるか否かという最低基準を満たすだけではなく、現場で確実に行動できる真の熱中症対策を構築する必要があります。

本社から一方的に指示を出すだけでなく、現場のリアルな課題を吸い上げ、実態に即した運用ルールの見直しが欠かせません。全従業員が納得して取り組める環境を整えてこそ、初めて実効性の高い安全管理体制が実現します。

 


形式的なルールから脱却し、実効性のある真の熱中症対策へ

熱中症対策の義務化に対応するうえで、企業は法改正の内容を「知らなかった」では済まされない状況に直面しています。単に罰則へ抵触するかどうかを気にするだけでなく、作業員の健康を守る真の熱中症対策が必要です。

そこで、本社主導で実効性のある手順を整備し、全従業員へ周知徹底して安全な職場環境を構築しなければなりません。では、実際にどのような方法で具体的な対策を進めればよいのか、次のステップを検討する段階へ移りましょう。

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