導入企業様
一般財団法人中部電気保安協会
- 業種:電気設備の保安管理・調査
- 事業エリア:愛知・岐阜・三重・静岡・長野の5県(一部地域を除く)
- 規模:43営業所/職員数2,347名(2026年4月1日現在)
- 導入範囲:多拠点・全社一斉
Work Mate導入前の課題
- 教育も連絡体制も通信機能のないウェアラブルデバイスも配備したものの、熱中症対策がマニュアル通りに実行されているかを確かめる手段がなかった
- 体調管理は健康チェック表による申告に頼っていた
Work Mate導入後の効果
- 装着とアラートの状況が個人単位で分かり、管理者が仲間の命を守るために具体的な指導・助言ができるようになった
- 申告に頼らない客観的な指標に置き換わり、本人や上長任せだった体調管理を組織で担えるようになった
- 装着率や活用状況のエビデンスをもとに対話を重ねることで、導入に消極的な職員も納得した
「熱中症対策デバイスを配ったものの、現場で機能している実感が持てない」「多拠点へ広げたときに運用できるか不安」──熱中症対策の運用には、こうした難しさがついてまわります。
一般財団法人中部電気保安協会も、この難しさに直面しました。同協会は愛知・岐阜・三重・静岡・長野の5県で、事業所や工場の電気設備の保安管理と調査を担っています。43の営業所に約2,000名の職員が在籍しています。作業の多くは客先での屋内外作業で、なかでも電気設備を点検して回る保安業務は、基本的に職員が一人で行います。停電点検の日は空調を止めて作業をすることになり、衛生管理上の理由からファン付き作業服の着用が制限される客先もあります。熱中症のリスクが非常に高い環境で作業を行わなければなりません。
同協会は2025年9月から30名規模でWork Mateの試行を始め、2026年5月に本格導入。導入時に1カ月で43回の現地説明会を実施し、多拠点・大人数(約2,000名)・全社一斉導入を完了しました。
どの観点で他社サービスと比較したか。導入後、どのように運用体制を構築したか。保安部の加藤様、安全健康推進グループの長縄様、調査部の山口様に伺いました。
プロフィール
- 加藤様:保安部署の安全担当
- 長縄様:安全健康主管部署担当
- 山口様:調査部署の安全担当
熱中症対策は打った、しかし実態が見えなかった
-Work Mate導入前、熱中症対策はどのように進めていたのでしょうか。
加藤様:熱中症シーズン前の毎年4月に職場内教育を実施し、発症時の緊急連絡体制を整備するほか、暑さ指数計を配備しました。2023年からは要望のあった現場に通信機能のない熱中症対策デバイスも導入しました。厚生労働省のガイドラインに基づいて事前教育を行い、デバイスを活用してアラートが出たら休憩を取る、という運用を続けてきました。
-そうした対策を進めるなかで、課題に感じていたことを教えてください。
山口様:現場の状況が見えないことに、歯がゆさがありました。熱中症災害が発生しても、実際のところ現場でどのような対策が行われていたのかを確認できない状態でした。正直なところ、職員一人ひとりに対応を委ねる体制が続いてしまっていました。
長縄様:体調管理も同じでした。健康チェック票にレ点をつけ、その日の体調を確認していましたが、職員に「昨日は十分に睡眠が取れましたか」と尋ねても「十分ではありませんでした」と答える人はほとんどいません。まして「前日に夜中まで遊んでいました」とは言えないものです。前日の疲れが残っているなど、申告しづらい・本人でも気付かない項目もあり、実態としては本音を引き出せない表面的なものになっていた部分もあったと思います。
-以前配備していたデバイスは、その課題の改善にはつながらなかったのでしょうか。
長縄様:通信機能がなかったため、改善には至りませんでした。アラートの記録をリアルタイムに確認できず、いつ、誰に、何回アラートが出たのかを後から振り返れません。アラートが役に立った実績を示せないので、装着の必要性を職員に納得してもらう材料もありませんでした。
加藤様:そもそも未然防止は、何も起こらなかったということがそのまま結果になる取り組みです。手応えを得にくい活動だと言えます。だからこそ、通信でつながるデバイスを活用する意味は大きいと考えるようになりました。熱中症にかかるかどうか分からないという状態を、発症の手前で予兆として見える化できるからです。予兆が見えれば、休憩を取る、冷却するといった、身体を守る対応につなげられると考え、デバイスの切り替えを検討し始めました。
全社一斉導入を見据えて4つの観点で比較し、Work Mateを試行
-Work Mateを知ったきっかけと、導入を検討した理由を教えてください。
加藤様:協力関係にある会社で、Work Mateの試行検証を進めているという情報を聞いたのがきっかけです。検討した理由は、実際の作業における対応状況を見える化できること、そしてデータの分析を通じて改善活動につなげられることでした。
-他社のサービスとは、どのような観点で比べましたか。
加藤様:同業他社のサービスを横並びに置いて、扱いやすさ、データの見える化、価格、導入後のサポート体制の4点で評価しました。
扱いやすさは、現場の実情から外せない条件です。デバイスが大きいと客先の設備に接触するおそれがあり、重さもそれだけで負担になります。毎日の充電が必要な機種は、充電を忘れた時点で使えなくなってしまいます。その点でWork Mateのデバイスは軽量で、毎日充電する必要もなく魅力的でした。
そして、データの見える化は、以前のデバイスではできなかったことです。通信機能を持つデバイスになったため、装着状況やアラート等もリアルタイムで確認できます。
前回のデバイス導入の反省を踏まえ、重視していたのがサポート体制です。Work Mateについては紹介してくれたグループ会社から「丁寧にアフターフォローをいただけますよ」と聞いていましたが、自分たちの目でも確かめようとグループ会社の試行現場に出向き、管理側の話を聞くほか、実際に装着している方の感想まで直接聞きました。
その結果、評判どおりと感じたので、試行を決めましたね。
-試行では何を確認しようとしていたのですか。
山口様:全社規模で導入すべきかどうかを見極めるための試行でした。確認したかったのは2点です。ひとつは、実際の作業における対応状況を把握して、未然防止策を充実させられるかどうか。もうひとつは、アラートの発報によって、自覚症状のない段階でも休憩や作業の中止といった行動につなげられるかどうかです。
アラートのタイミングは、安全側に寄せれば発報は増えますが、増えすぎれば現場は反応しなくなります。鳴りすぎて信頼されなくなる状態を避けられるよう、Work Mateコンサルタントに相談しました。
-試行を経て、全社へ広げようと判断した理由を教えてください。
加藤様:熱中症は、死亡や後遺症を被る災害につながる可能性があります。未然防止策の実践状況を見える化できれば、対策が徹底されない原因を特定し、具体的な対応策を管理者に助言・指導できます。管理者による職員への具体的対応の指示も充実させられる。
Work Mateなら、当協会の希望に合わせてコンサルタントが常に迅速に、データに基づいた様々な資料作成・共有という形で応えてくれることを実感しました。そのためWork Mate全社一斉導入を決めました。
導入と装着のつまずきは、現場を回って解消した
-導入時、1カ月で43回もの現地説明会を実施されています。当時はどのような状況だったのでしょうか。
加藤様:1カ月かけて広域にわたる全事業所を回る計画で、Work Mateコンサルタントの方々にも全事業所へ同行いただきました。これが2つの意味で大きかったと感じています。
ひとつめは導入の必要性を職員に「我が事」として受け止めてもらえたことです。安全部門では、熱中症の危険性とWork Mate導入の意義を伝えました。Work Mateコンサルタントには、事前に当協会の現状に合わせた専用動画も作成いただき、外部の目線から職員へのレクチャーを実施してもらいました。
ふたつめは、迅速な初期設定です。Work Mate導入と携帯電話からスマートフォンへの移行が重なったこともあり、協会側の人手だけでは到底対応できません。現地説明会が開始してから完了するまでの間に、出席者全員が初期設定まで終えられたのは非常に助かりました。
長縄様:初期設定についても当協会の希望を叶えてくださり、より簡便でスピーディーにできるような二次元バーコードを使った設定方式を新たに開発いただきました。
山口様:同行いただいたスタッフの方々が、職員一人一人とコミュニケーションを図ってもらった結果、各営業所でのスムーズな利用開始につなげられたと感謝しております。
-全社で導入してから新たに見えてきた課題はありましたか。
長縄様:100%の装着は徹底されないことと、正しく使用されていない場合があることです。
対応としては、装着時間などのデータをもとに、保安部が各営業所の管理者とコンタクトを取り、導入への理解を求めました。管理者には、Work Mateコンサルタントと相談をして当協会用に集計した装着状況のデータを示して導入の意義を説明しながら、1営業所ずつ前向きに取り組んでもらえるように改善していきました。
加藤様:導入当初は、新しい取り組みに対する消極的な反応もありました。ただ、装着率や活用状況のエビデンスをもとに対話を重ねることで、早期に解消できました。経営層から発信された考え方を繰り返し伝えたことと、データという裏づけをもとに理解を得られたことが大きかったと思います。
-運用が定着するまで、Work Mateコンサルタントからの支援はありましたか。
長縄様:はい。現場からよく聞かれる質問への回答を、Work Mateコンサルタントと一緒に作成しました。社内ポータルにインデックスをつけてFAQとして掲載し、随時更新しています。
山口様:操作方法と運用ルールを説明する動画も、職員向けと管理者向けにそれぞれ制作していただきました。社内ポータル上に常設して使用しており、年度の途中で入ってくる職員にも、スタートガイドと併せて「まずはここを見てください」と案内しています。手順どおりに進めれば、ほとんどの方が自力で設定を終えられる内容のため、我々も説明の手間が省けます。
加藤様:Work Mateの支援範囲は、アラート通知するだけではないのだと実感しています。運用ルールの設計から現場への説明、質問への回答づくりまで、職員の行動が変わるよう、さまざまな要望に応え続けてくれるので非常に助かっています。個別の困りごと・改善要望に対し、いつでも速やかに対応してくれるのはWork Mateの大きな魅力だと感じていますね。
-導入を進めるなかで、現場から反対の声は上がりませんでしたか。
山口様:大きな反対意見はなかったですね。ただ、上長が必ず出勤しているとは限らないため、体調変化の確認・報告をどうするのかという声は上がりました。その点については、上長から指示が出されなければ行動できないという体制に問題があると考えました。
長縄様:改善策として、その課題感を支店や営業所の管理者を対象とした熱中症予防管理者研修で伝えました。すると受講した管理者から、本部の指示を待つのではなく自分たちの判断で動くので任せてほしい、という反応が返ってきました。
指示されて動く段階から、現場が自ら判断する段階へ。Work Mate導入によって、目指していた安全活動の姿に近づいてきたと感じましたね。

アラートが出たら、誰がどう動くか。中部電気保安協会の運用体制
-アラートが出たとき、現場ではどのように動くのでしょうか。運用ルールなどあれば教えてください。
長縄様:体調の変化を知らせるアラートを受信したときは、速やかに休憩を取ることをルールとしています。自覚症状がないから作業を続ける、という判断の余地をなくすためです。あわせて、管理者が必ず本人の状態を確認します。アラートが出た職員へ、営業所の所長か課長が連絡をします。もちろん、本人から連絡が入ることもあります。
各営業所は自所の状況を確認しますが、支店は管内全体に目を配ります。現場に近い順に、課長、所長、調査担当長、安全主幹、部長という形で、それぞれの持ち場の広さに応じて閲覧できる範囲を変えています。確認の印が付いたか、きちんと情報が確認されているかまで分かります。
-広域・多拠点に展開する貴社にとって特に助かった機能はなんですか。
長縄様:よかったのは、我々が望む情報だけに特化した、直感的に把握できる統括機能のオーダーメイド開発です。所長が見るのは自分の営業所ひとつですが、支店は複数営業所を見ることになります。立場によって見るべき範囲も見たいものも異なるので重宝しています。
他にも、当協会のために暑さ指数特別警戒アラートを開発いただきました。職員の体調とは別に、職員が作業している各地域の暑さ指数が35度以上になった場合にもアラートが届きます。従来は管理者が担当エリアを都度調べて作業者へ連絡していたため、調査のタイミングがまちまち、漏れもありました。自動化により管理者の手間が減り、正確に運用できる機能開発いただいたことも助かりました。
-毎朝の職員の健康チェックでは、Work Mateをどのように活かしているのでしょうか。
加藤様:1日の終わりには、その日に職員自身へ発報されたアラートの内容を自ら確認できます。保安部では朝礼時に、前日のアラート状況をもとに、上長から職員へ声をかけています。
山口様:調査部では必ずしも全員が朝礼に出られるとは限りません。そうした場合は、監督者が職員の顔アイコンの色で体調を確認しています。
上長任せだった体調管理が、組織で担えるものになった
-導入後、安全管理の面で変わったことはありますか。
加藤様:現場が見える状況になりました。休憩が取れていない、無理をしているという状態に対して、管理者の側から具体的な指導・助言ができます。仲間の命を守るための声かけができるようになった、ということです。また、現場での対応状況が把握できたことにより、“もっと上手く、良くする”ためのカイゼン活動につなげられたことも、安全活動の在り方として大きな成果でした。
山口様:単独作業が中心なので、一週間、上長と会話していない職員もおりました。上長からの発信が増えたことから、言葉を交わす機会も増えました。職場内のコミュニケーションが向上し、心理的な安全性の面でも良い方向に働いていると感じています。
次に見据えるものは、
-今後は、どのような活用を考えていますか。
山口様:「特別なケアが必要な装着者への見守り強化」や「過酷な作業環境の特定を進めることによる作業計画自体の見直し」にもつなげていきたいと考えています。また、健康増進の支援にもつなげていきたいです。
長縄様:協会の仕事は、一人で動き回ることが多いという特徴があります。近くに一般の方はいても、協会の人間が一緒にいない状況が少なくありません。動けなくなった、倒れた、意識を失ったといったときに、いかに早く見つけてあげられるか。そのための体制づくりを今後進めていきたいと考えています。
-あらためて振り返って、Work Mateコンサルタントからの支援で助かった点はどこでしょうか。
加藤様:「検知して通知する」機能の外側まで、一緒に取り組んでいただきました。運用ルールの設計、全43回の説明会への同行、二次元バーコードによる初期設定の簡便化、FAQづくり、職員向けと管理者向けの動画制作。営業所ごとの改善を支える装着状況のデータも日常的に出していただいています。
長縄様:個別の困りごとや改善要望に対しても、たらい回しにされることなく、速やかに対応していただけました。
-最後に、導入を検討している企業へメッセージをお願いします。
加藤様:おすすめしたいポイントは、現場の状況と健康管理を見える化できることです。
未然防止は、ゼロ災害(無災害)という結果で評価されてしまうことが少なくありません。しかし本来は、実施している中身そのものが未然防止だと考えています。たまたま災害がなかった事業所が表彰を受けるようなことがあってはいけません。結果を評価基準にすれば、軽微な災害なら報告しないほうが得だという判断が生まれ、取り組みとしては逆行してしまいます。
実践なくして成果なし。いくら良いことを唱えていても、実践につなげられなければ、何もしないよりもひどいことになります。そして実践の中身を評価するには、その実践が見えていなければなりません。私たちが見える化にこだわった理由も、そこにあります。
災害のリスクをどう受け止め、安全活動をどう展開するか。その捉え方次第で、Work Mateから引き出せる価値は大きく変わります。熱中症は、命を落とすこともある災害です。重篤災害の未然防止につなげるという点において、非常に効果的なサービスだと考えています。