熱中症対策の強化のため、ウェアラブルやスマートウォッチの導入を検討する現場が増えています。しかし、種類による「型」や「通信の有無」など、特徴の違いによって選定に迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。
過去に導入した企業では「アラートが多すぎて現場に定着しなかった」という声も少なくありません。とくに個人の健康管理向けのスマートウォッチと、現場の安全管理向けのウェアラブルでは、選定時の基準も異なります。
そこで本記事では、熱中症対策ウェアラブルの主な種類と現場に定着させるための選び方を解説します。アラート設計や異常検知後の運用体制まで含め、失敗しない選定方法の考え方として参考にしてみてください。
なぜ熱中症対策にウェアラブルが注目されるのか
熱中症対策には、「発見の遅れ」を防ぐことが効果的です。ウェアラブルは、温湿度などの環境データや活動データを分析・可視化できるため、熱中症リスク管理を支援するツールとして注目されています。
ただし、ウェアラブルはWBGTの把握や休憩、水分・塩分補給などに代わるものではなく、作業者の状態を把握する手段のひとつです。基本的な熱中症対策と組み合わせ、異変の早期発見や発見後の対応を補助する役割があります。
人の目・自己申告では対応が遅れる
熱中症対策では、本人からの自己申告や管理者の巡視だけに頼らず、複数の方法で異変を見つける仕組みが必要です。厚生労働省の資料「職場における熱中症対策の強化について」でも、本人に自覚症状がなくても、周囲から明らかな症状が確認できれば対応するように示されています。
ウェアラブルを活用するメリットは、パルスなどのバイタルデータを継続的に取得できることです。異変を早期に把握し、休憩や状態確認などの行動につなげる仕組みとして活用できます。
熱中症対策のスマートウォッチ・ウェアラブルの主な種類
熱中症対策向けのウェアラブルは、装着する場所によって使いやすさが変わります。代表例は以下の3種類です。
種類 | 主な特徴 | 向いている現場・作業 |
リストバンド型 | 腕に装着しやすい | 製造・保守・点検など |
シャツ型 | 体に密着させやすい | 長時間の作業など |
ヘルメット型 | 保護具と一体で使いやすい | 建設・工場など |
測定できる項目だけで選ぶのではなく、作業中に邪魔にならないか、保護具と干渉しないかといったポイントも比較しておきましょう。
まず「スマートウォッチ」と「職場向けウェアラブル」の違いを押さえる
スマートウォッチと職場向けウェアラブルは、それぞれ利用する目的が異なります。
デバイスの種類 | 利用する目的 |
スマートウォッチ | 一般向けのスマートウォッチは、パルスや歩数、睡眠など、おもに個人の健康管理 |
職場向けウェアラブル | 作業者本人だけでなく、管理者による遠隔の見守りやアラートの記録・共有も想定 |
職場向けウェアラブルの特徴は、取得したバイタルデータを管理画面へ送り、検知した異変を本人と管理者へアラート通知する仕組みです。位置情報やSOS発信を組み合わせることで、離れた場所にいる作業者への対応にも活用できます。
リストバンド型(腕時計型)
腕時計のように身につけられるリストバンド型は、幅広い現場で導入を検討しやすいタイプです。普段から腕時計を着用している作業者であれば、作業中の違和感も少なく装着できます。
ただし、作業内容によっては、手袋や袖口と干渉する可能性があります。とくに機械内部へ手を入れる作業では、安全面から腕時計類を外すルールが設けられている場合もあるため注意しましょう。
シャツ型(ウェア型)
シャツ型(ウェア型)は、センサーを備えた衣服からバイタル情報を取得するタイプです。体に密着した状態で利用するため、作業中もセンサーの位置を一定に保ちやすい特徴があります。
リストバンド型とは異なり、衣服としての管理も発生します。汗をかきやすい夏場は、洗濯の頻度も運用負荷に直結することも想定しておきましょう。
ヘルメット型
ヘルメット型は、作業用ヘルメットにセンサー機器を装着するタイプです。建設現場や工場など、ヘルメットの着用が前提となる環境に適しています。
また、ヘルメットをかぶれば機器も身につけられるため、個別にウェアラブルを装着する手間を軽減できます。既存のヘルメットに取りつける場合は、重量や装着位置を確認しておきましょう。
型を選ぶときの比較軸(自社の現場要件と照らす)
ウェアラブルの型は、機能の多さではなく、自社の現場要件とマッチしているかどうかで選びます。とくに比較したい項目は、以下の4点です。
- 作業中の装着負担
- 保護具との干渉
- つけ忘れの起こりにくさ
- 充電・洗濯・保管などの運用負荷
一人作業や遠隔地での作業がある場合は、異常を検知した後の運用体制も確認します。本人だけでなく管理者まで情報を共有できるかどうかも含めて、ウェアラブルの仕組みを比較しておきましょう。
通信あり/なしの違いと現場での向き不向き
熱中症対策のウェアラブルは、通信機能の有無によって異常を把握できる範囲が変わります。
本人への警告だけで十分な現場であれば、端末単体で動作するタイプも選定の候補です。一方で作業者と管理者が物理的に離れている現場では、通信機能を使って情報を共有できる仕組みが役立ちます。
通信ありは遠隔見守り・アラート共有ができる
通信機能があるウェアラブルは、離れた場所にいる管理者へ作業者の情報やアラートを共有できます。取得したデータをスマートフォンやゲートウェイなどからクラウドへ送り、管理画面で確認する仕組みが一般的です。
たとえば、保守・点検の作業では、作業者が単独で顧客先へ向かうケースも想定されます。作業者の状態を離れた場所からリアルタイムに把握する必要がある現場では、通信機能のメリットを活用するのが効果的です。
通信なしは手軽だが把握には弱い
通信機能がないタイプは、端末単体で本人へ警告を出す用途に向いています。クラウドやゲートウェイなどの環境を用意せずに使えるため、比較的手軽な導入が可能です。
ただし、本人がアラートに気づけない状況では、離れた場所にいる管理者が異常を把握できません。本人への通知だけでは救助につながらない可能性もあるため、異常時に近くの作業者が対応できる環境かどうかを整理のうえで選定しましょう。
失敗しない熱中症対策ウェアラブルの選び方
ウェアラブルの選定時には、型や通信機能の有無に加え、以下のポイントも確認しておきましょう。
- 干渉や負担がなく装着できるか
- 異常検知後の運用まで設計できるか
- 適切なタイミングにアラートを検知できるか
製品選定と同時に、機器の装着方法や運用体制などのルールも設計しておくと安心です。
装着部位・保護具との干渉・運用負荷で選ぶ
ウェアラブルは、作業中の干渉や作業後の運用負荷を考慮して選ぶ必要があります。
たとえば、リストバンド型であれば、手袋や作業着と干渉しないかどうかの確認が必要です。ヘルメット型では、ライトやフェイスシールドなどの組み合わせも確認します。
また、シャツ型を導入するなら、洗濯や着替えまでを含めた運用設計が必要です。可能であれば、本格導入の前に機器を貸し出して試験運用を行ってみましょう。
「異常検知後の運用体制」まで含めて選ぶ
ウェアラブルを選ぶときには、アラートが出た後に「誰が何をするのか」まで含めた設計が必要です。たとえば、熱中症のおそれを知らせるアラートが出た場合は、以下のような対応が考えられます
- 作業を中断する
- 涼しい場所へ移動する
- 健康状態を確認する
- 作業に復帰するかどうかを判断する
管理者への通知機能がある場合は、通知を受ける担当者も決めておきましょう。アラートから復帰判断までの一連の流れを決めておくと、製品に必要な機能を明確にできます。
アラートのタイミングを理解して選ぶ
ウェアラブルのアラートは、回数だけではなく「どの状態で発報するのか」の確認も必要です。頻繁にアラートが出る状態では、現場の判断負担が増加し、形骸化につながる可能性が高まります。
一方で通知のタイミングが遅れてしまうと、ウェアラブルによる早期発見という目的を果たせません。製品を比較するときには、アラートの設定項目や個人差を考慮した機能の有無などもチェックしておきましょう。
熱中症対策ウェアラブルのよくある質問
ウェアラブルは、装着するだけで熱中症を防ぐ機器ではありません。作業者の状態をいち早く把握するため、WBGTの把握や水分・塩分補給などの基本対策を補う手段として活用されています。
そのため、導入検討時には以下のような疑問が「よくある質問」として挙げられています。
- スマートウォッチで熱中症対策はできる?
- ウェアラブルは熱中症対策に有効?
- ウェアラブルによる熱中症対策の仕組みは?
- どんなウェアラブルを選べばよい?
導入後の失敗を防ぐためにも、よくある質問を事前にチェックしておきましょう。
スマートウォッチで熱中症対策はできる?
一般向けスマートウォッチも、バイタルデータを確認する手段になります。ただし、職場全体の安全管理に必要な機能が備わっているとは限りません。
職場の異常発生時には、どの作業者に異変が起きているのかを特定し、現場へのスムーズな連絡が必要です。個人の健康管理と組織の安全管理は目的が異なるため、利用目的を整理してから必要機能を選定する方針が適しています。
ウェアラブルは熱中症対策に有効?
ウェアラブルは、作業者の状態変化に気づく手段のひとつとして活用できます。ただし、ウェアラブルだけで熱中症を診断したり、防いだりするものではありません。
厚生労働省は、WBGT値の測定をはじめ、暑熱環境の改善や作業時間の短縮などを熱中症予防対策として示しています。ウェアラブルは基本的な対策を行ったうえで、個人の状態把握を補助する用途として検討するのが適切な判断です。
熱中症は自覚症状が出る前に進行するため、人の目や自己申告では対応が遅れる可能性もあります。バイタル(パルス)を継続的に測り、予兆段階で気づけるウェアラブルの機能が熱中症対策に有効です。
ウェアラブルによる熱中症対策の仕組みは?
ウェアラブルには、バイタルデータを継続的に取得し、異常検知後にアラートを出す仕組みがあります。基本的な流れは、以下のとおりです。
- 作業者がウェアラブルを装着する
- パルスなどのデータを取得する
- 取得データから状態の変化を判定する
- 必要な場合に本人へアラートを出す
- 通信機能があれば管理者へ情報を共有する
- 作業中断や休憩などの対応につなげる
製品によって取得するデータや判定方法が異なるため、導入する目的と搭載機能を照らし合わせて選定する必要があります。
どんなウェアラブルを選べばよい?
ウェアラブルは、以下の4項目で比較すると選びやすくなります。
- 作業内容に適した型
- 通信機能の有無
- アラートの精度
- 異常検知後の運用体制
まずは作業内容に合わせて、リストバンドやシャツなどの型から候補を絞りましょう。詳しくは、本記事の「失敗しない熱中症対策ウェアラブルの選び方」を参照してみてください。
熱中症対策ウェアラブルは「型・通信・アラート設計・異常検知後の運用の適合性」で選ぶ
熱中症対策ウェアラブルは、型や通信機能だけでなく、アラート設計と異常検知後の運用体制まで含めて「現場にあうかどうか」で選ぶことが重要です。
ただし、ウェアラブルを導入するだけでは、アラートを受けた作業者の行動が変わるとは限りません。アラート検知後の運用体制を含め、現場へ定着させる取り組みやルール化も必要です。
ウェアラブル導入後に起こりやすい課題と対策については、以下の記事も参考にしてみてください。